頭をぶつけたとき頭部CTは必要か?
頭部外傷の際に頭蓋内病変を評価するには、頭部CTが有用である。脳挫傷や出血の有無を検索することができる。しかし、少し頭をぶつけた程度の外傷で頭部CTまで行う必要があるであろうか?
頭部CTの適応
New Orleans Criteria
頭痛(headache)
嘔吐(vomiting)
60歳以上
薬物またはアルコール中毒
短期記憶障害(deficits in short -term memory)
鎖骨上の外傷
痙攣(seizure)
以下の7つの所見のうち、一つ以上認める場合はCTをとるべき。
この基準にそって行うと感度は高いが特異度は低い、つまり重症の人は見逃さないが必要ない人にもCTを行う可能性がある。頭をぶつけて頭痛のある人はいくらでもいるであろう。
The Canadian CT Head Rule
軽症の頭部外傷で、以下のものがなければ神経学的な介入を必要とするハイリスク疾患を除外できる
受傷2時間のGCSが15点以下
頭蓋骨開放骨折、陥没骨折を疑う
頭蓋底骨折の疑い(鼓室内出血、パンダ目サイン、髄液鼻漏、髄液耳漏、バトルサイン)
2回以上の嘔吐
65歳以上
その後CT上で外傷のある中等度の患者を除外するために以下の質問をする。
外傷30分前以上の健忘
高エネルギー外傷(自動車にはねられる、車外に投げ出される、3フィート、5段以上の高さの階段から落ちる)
*GCS13-15、意識消失が目撃、記憶喪失や意識混濁があった場合にこの基準を適応する
*この基準は外傷患者でない場合、GCSが13未満、16歳未満、ワーファリン内服中、出血性疾患がある、明らかな開放性頭蓋骨骨折がある場合には適応されない
こちらはより具体的になっており、特異度がNew Orleans Criteriaよりも上昇している。
小児の場合には
NICE guideline
頭部CT適応基準
虐待を疑う症例
受傷後の痙攣(てんかんの既往なし)
救急室での初期評価でGCS<14
開放性頭蓋骨骨折または陥没骨折の疑い
頭蓋底骨折を示唆する身体所見
乳児で頭部皮下血腫、腫脹、5cm以上の裂傷
神経学的巣症状
これが一つでもあれば該当
目撃がある5分以上の意識消失
異常なぐったり感
3回以上の嘔吐
5分以上持続する逆行性および前行性健忘
高エネルギー外傷
これが二つ以上あれば該当
軽症頭部外傷の4%にCTで頭蓋内病変を認め、1%で治療を要すというデータもあるように、100人中99人は経過を見るだけで大丈夫なのである。ただ、その1人を見逃さないために以上の基準を参考に頭部CTを行う必要がある。ただし、小児の場合は特に被爆の影響も考慮する必要がありCTを施行する際には慎重に行う必要がある。