概日リズムと時差ボケの対策
時差ボケはjet lagとも呼ばれ、時差がある地域に飛行機で短時間に移動した際に起こる不眠、昼間の眠気、倦怠感などの心身の不調のことである。
原因として挙げられるのが、概日リズムの乱れであり概日リズムの乱れによっておこる睡眠障害を概日リズム睡眠障害という。
概日リズム(circadian rhythm)とは
睡眠覚醒、自律神経系、ホルモン内分泌系、代謝系活動にみられる約24時間周期のリズムのことである。例えば、直腸温は午前から午後にかけて上昇し、午後4時ごろに最高値に達したのち徐々に低下していき、午前4時ごろ最低値をとる。ホルモン血中濃度も、メラトニンは午前4時ごろに、コルチゾールは午前10時ごろにピーク値を示す。
24時間リズムの成因としては外因性リズムと内因性リズムがあり、内因性のものを概日リズムと呼ぶ。
外因性リズム
気温や湿度などの環境因子や社会的スケジュールによって生じる活動レベルの変動に対する生体機能の反応。
内因性リズム
昼夜変化や時計がなくても睡眠や体温の24時間リズムは持続するが、その周期は24時間から外れてくる。この24時間とは異なる周期をフリーラン周期といい、ヒトでは平均25時間である。概日(circadian)というのは概ね1日ということで、このフリーラン周期に由来する。
概日リズムの同調
概日リズムが24時間周期の昼夜変化に一致することをリズム同調といい、概日リズムを同調させる環境因子を同調因子という。同調因子の中で光が最も強い作用を持ち、種によっては摂食や温度、気圧、社会生活が同調因子になりうる。
内的脱同調
睡眠覚醒リズムと深部体温リズムなど体内のリズムが解離する状態を内的脱同調という。概日リズムの同調がなされない状況では、体温リズムは約25時間の周期を維持するが、睡眠覚醒リズムは34時間にも延長する。まれには、48時間周期や72時間周期になることもある。
内的脱同調が生じると、生体機能の時間的秩序が乱れ、不眠や昼間の眠気、倦怠感など心身の不調を起こす。
概日リズムの作用
概日リズムの作用で最も重要なのは、生物時計としての機能である。リズム同調が成立しているのであれば概日リズムから時刻を知ることができ、昼行性の動物であれば、昼に体温や循環機能を上昇させ作業能力を上げることや、植物であれば開花時刻を決めることなどを行っている。
睡眠においては、
夜の睡眠の直前
深部体温が低下、メラトニンの分泌
睡眠の導入
↓
睡眠前半
成長ホルモンの分泌
睡眠中の細胞分化や成長の促進
↓
睡眠後半
副腎脂質ホルモンの分泌
糖新生により早朝血糖値の低下を防ぐ
というように、生体機能に時間的秩序を与えている。
メラトニンの作用
メラトニンには以下のような作用が考えられている。
- 体色変化(魚類、両生類)
- 光周情報の伝達(昼と夜の長さの変化)
- 生物時計の同調
- 網膜における作用(視覚機能調節)
- 睡眠誘導作用
- 免疫機能の調節、抗酸化作用
メラトニンは視交叉上核(時計中枢)からの刺激により夜間に合成され、光によって抑制される。概日リズムは視交叉上核が中心となりそれぞれの細胞でも周期を作るが、メラトニンは視交叉上核の指令を受けつつも、視交叉上核を含む全身へと作用し概日リズムを調整する役割を果たす。
メラトニンは上記の作用から睡眠障害や気分障害を治療するために使用されることがある。他にも免疫系にはたらくなど様々な作用があり期待される反面、注意が必要な場合もある。
時差ボケの原因と対策
時差ボケは急な環境の変化に対し概日リズムを同調させることが出来なくなり(外的脱同調ともいう)、このことにより体内のリズムが乱される内的脱同調が生じることによって起こる。生体機能の時間的秩序が乱れ、体温の変化やホルモンの分泌が活動や睡眠に対し適切に行われず心身の不調を起こす。
時差ボケの対策としては、概日リズムをなるべく乱すことなく現地の生活に合わせて同調させていくことが挙げられる。
具体的には、
上手な時差の克服方法
滞在期間が2、3日の場合
出発前に十分な休養と睡眠をとっておきましょう。
現地時間に無理にあわせず、日本時間の夜間にあたる時間帯にまとまった睡眠をとるようにして日本のリズムを保った方が楽な場合もあります。滞在期間が比較的長い場合
出発前に十分な休養と睡眠をとっておきましょう。
東方(アメリカなど)への旅行場合、数日前より少しずつ早く床につき早起きをするようにしましょう。西方へ向かう場合(ヨーロッパなど)はその逆に遅く寝て遅く起きるようにします。
機内では、まず時計を到着地の時間に合わせます。フライトが東方行きの場合にはなるべく早く眠っておくようにします。
到着後は、現地時間に合わせて行動しましょう。
太陽光の利用
滞在地では強力な太陽光線による明るさを利用して体内リズムを現地の時間に早く同調させるようにします。
例)アメリカ西海岸へ飛行した第1日目は、現地の正午頃(日本の午前)から海岸やプールサイドで日光浴や散歩、買物、スポーツ(速歩、水泳テニス、ゴルフなど)をするとよいでしょう。
(引用)JAL 時差ボケの上手な克服法
ちなみに
光は網膜から入り視交叉上核へと届くので、光を浴びたくない状況ではサングラスなどが効果的である。
概日リズムが後退するというのは睡眠時間帯が遅くなることでいわゆる夜ふかしの状況である。
時差ボケは東回りの移動の方が重くなる傾向があり、これは概日リズムを前進させること(夜が短い状況)の難しさを表している。
ポリソムノグラフィー(PSG)で計測すること
β2-ミクログロブリンについて
β2-ミクログロブリンは、HLA鎖Ⅰ型抗原のL鎖として免疫応答に重要な役割を果たす蛋白である。
動態
β2-ミクログロブリンは、赤血球を除く全身の有核細胞表面に広く分布し、特にリンパ球、単球には豊富に存在する。これらの細胞表面から分泌されると、腎糸球体で濾過された後、約95%以上が近位尿細管から再吸収、異化を受ける。
評価
検査では、血清β2-ミクログロブリンと尿中β2-ミクログロブリンが用いられる。
血清β2-ミクログロブリン
血中濃度を評価する際には、産生側の要因と異化(腎機能、GFR)の要因を総合的に評価しなければならない。
産生の増加は、腫瘍や炎症性疾患によりβ2-ミクログロブリンを表現している細胞が増加する、もしくは細胞あたりのβ2-ミクログロブリン表現が増加することにより起こる。代表的な疾患には、多発性骨髄腫、リンパ性白血病、リンパ腫があり、自己免疫疾患や炎症性疾患でもサイトカインの働きなどによりβ2-ミクログロブリンの産生が増加することがある。
血中濃度はGFRとよく相関し、GFRの低下により血清β2-ミクログロブリンは増加する。また長期の血液透析患者では、透析により除去できなかったβ2-ミクログロブリンの沈着により透析アミロイドーシスを起こすことがあり、定期的に血液中のβ2-ミクログロブリンを測定する必要がある。
尿中β2-ミクログロブリン
尿中濃度の評価する際には、血中濃度の増加の有無と尿細管再吸収能を総合的に評価しなければならない。
血中濃度を増加させる病態があり尿細管再吸収能を上回る量が糸球体を通過すれば、尿中β2-ミクログロブリン濃度は増加する。
腎尿細管障害(近位尿細管)の障害により尿細管再吸収能が低下すると、尿中β2-ミクログロブリンは増加する。
ただし、β2-ミクログロブリンは酸性尿で変性するためα1-ミクログロブリンやNAGを参照する必要がある。
多発性骨髄腫において、血中β2-ミクログロブリンはアルブミンとともに病期分類にも用いられており高値であるほど予後不良である。(アルブミンは低値であるほど)尿中β2-ミクログロブリンについては、血中濃度の増加、腎障害などにより高値となるはずであるが、変動する要素が多く臨床的意義は少ないと考えられる。
ちなみに、多発性骨髄腫の尿検査としては尿蛋白(Bence-Jones蛋白)を測定する。Bence-Jones型が疑われる場合には、尿を検体に用いて免疫電気泳動を行う。
ショックの5pと急性動脈閉塞の5p
ショックの5p
- 呼吸不全 (pulmonary insufficiency)
- 冷汗 (perspiration)
- 蒼白 (pallor)
- 虚脱 (prostaration)
- 脈拍消失 (pulselessness)
急性動脈閉塞の5p
- 蒼白 (paleness)
- 疼痛 (pain)
- 脈拍消失 (pulselessness)
- 知覚障害 (paresthesia)
- 運動障害 (paresis)
どちらも循環障害による症状であるが、ショックでは全身、急性動脈閉塞では局所という違いがある。
ショックの際は、脈拍は頻脈にも除脈にもなりうる。また、血液分布異常性ショックの場合、血管拡張による血圧低下であるため冷汗や蒼白といった症状は起こりにくい。
急性動脈閉塞の約60%に突発する激痛が認められ、外観は蒼白に加え斑状の皮内出血(溢血点)が見られることもある。perishing cold(冷たさ)も主要な症状の一つである。また、paralysis(運動麻痺)は随意運動の完全喪失を意味し、急性動脈閉塞の症状としては部分的な喪失を表すparesis(運動障害)が適切なようである。